今日はフォーカル・ジストニアを引き起こす可能性のある因子について書いてみたいと思います。
疫学的な研究というのは発症原因の究明、リスクグループへの予防強化などには役立つかもしれませんが、実際に発症してしまってからはそれほど意味のない情報だと私は考えています。また、後述しますが、調査の母集団があまりに小さすぎて、それほど有意性のないものと考えざるを得ない現実もあります。
とりあえず、現在考えられているリスクファクターについてお話します。
音楽家のフォーカル・ジストニア発症率は1%程とされ、他のジストニアに比べて顕著に発症率が高いです。(たとえば、書痙は3000人に1人の発症率)
これに関しては、他の作業に比べて楽器演奏がかなりの精緻コントーロールを要するために、医者にかかる必要に迫られる人が多いためであろうと推測できます。
2021年4月10日追記
これについては、肌感覚では「100人に1人より遥かに多い」と音楽教師たちと常々話し合っています。決して「稀なこと」ではなく、私の経験では中高生の部活動でもよく見られます。
音楽家のジストニア発症のリスクファクター
Altenmüller,Jabuschらによる144人の患者からの疫学的データ
クラシック演奏家(95%)
数ある音楽ジャンルの中でも、楽譜通りに演奏しなければいけないという制約があるクラシック音楽の演奏家が多く受診しているようです。制約の少ないジャズなどの演奏家は、症状の出る音域、音型を避けて演奏活動を続けている例もあるようですが、オーケストラ奏者などはその辺の融通はききませんから、納得のいく数字です。
ただし、調査が行われたのがドイツの音楽大学に付属する研究所なので、クラシック演奏家が多いという事情も考慮しなければなりません。実際、スペインではフラメンコギタリストに多くの症例が報告されています。
男性(81%)
性別に関してはこちらとしても手の打ちようがありません・・(苦笑)
40歳未満で発症(80%)
不安傾向・完璧主義(70%)
このデータに私は大きな疑問を持っています。すでにフォーカル・ジストニアを発症した後の音楽家に心理テストをすれば、不安傾向の診断が出るのは当然のことと考えるからです。
たとえば、音楽大学入学者全員を対象に調査を行い、追跡調査によって後に発症した人とそうでない人の比較を行えたらいいと思うのですが。
2021年4月10日追記
ドイツのフライブルク音楽大学で、確か2012年頃から、入学した学生全員の調査を開始しているはずです。どなたか詳しい方いたらぜひご教授ください。
遺伝的要因(36%)
これに関しては、本人の申告だけに基づいているため、もっと高率である可能性が大きいようです。
この調査を行ったAltenmüller教授から直接聞いた話ですが、自分の親類に運動障害を持った人はいない、と言っていた患者の母親が実は書痙だったケースがあるそうです。
この母親本人も自身が書痙と知らずに、ただの「字が下手・不器用」と思って、自然に字を書いたりすることを避けるような生活を送っていたそうです。
現在、発症した演奏家の血液を採取して、遺伝的要因を調べる研究が行われています。
2021年4月10日追記
ドイツのAlexander Schmidという学者が、2012年頃にジストニアと遺伝に関する論文でドイツジストニア協会の賞を受賞していたはずです。その後情報をフォローできていないのですが、あくまでも仮説として「ある種の特徴的な神経フィードバックシステムを持つ人たちがいて、その人たちがジストニアのリスクグループなのではないか」という話でした。そういえば私も血液を提供していました(笑)
慢性的な使いすぎ症候群・筋筋膜性疼痛症候群・神経障害性疼痛・筋肉の外傷
これらも、フォーカル・ジストニアの発症にかかわっている可能性があると考えられています。
アレクサンダー・テクニークの考え方からすれば、習慣的な体の使い方からあらゆる障害が発生するわけで、フォーカル・ジストニアにかかわらず、これらの生涯の予防・改善は必須です。
上記のリスクファクターの中で、我々がコントロールできるもの(心理傾向・演奏スタイルなど)、できないもの(遺伝・性別など)があり、少なくともコントロールできる部分について、アレクサンダー・テクニークの有用性を常に実感しています。これについてはまた詳しく書いていきたいと思っています。
疫学的な研究というのは発症原因の究明、リスクグループへの予防強化などには役立つかもしれませんが、実際に発症してしまってからはそれほど意味のない情報だと私は考えています。また、後述しますが、調査の母集団があまりに小さすぎて、それほど有意性のないものと考えざるを得ない現実もあります。
とりあえず、現在考えられているリスクファクターについてお話します。
音楽家のフォーカル・ジストニア発症率は1%程とされ、他のジストニアに比べて顕著に発症率が高いです。(たとえば、書痙は3000人に1人の発症率)
これに関しては、他の作業に比べて楽器演奏がかなりの精緻コントーロールを要するために、医者にかかる必要に迫られる人が多いためであろうと推測できます。
2021年4月10日追記
これについては、肌感覚では「100人に1人より遥かに多い」と音楽教師たちと常々話し合っています。決して「稀なこと」ではなく、私の経験では中高生の部活動でもよく見られます。
音楽家のジストニア発症のリスクファクター
Altenmüller,Jabuschらによる144人の患者からの疫学的データ
クラシック演奏家(95%)
数ある音楽ジャンルの中でも、楽譜通りに演奏しなければいけないという制約があるクラシック音楽の演奏家が多く受診しているようです。制約の少ないジャズなどの演奏家は、症状の出る音域、音型を避けて演奏活動を続けている例もあるようですが、オーケストラ奏者などはその辺の融通はききませんから、納得のいく数字です。
ただし、調査が行われたのがドイツの音楽大学に付属する研究所なので、クラシック演奏家が多いという事情も考慮しなければなりません。実際、スペインではフラメンコギタリストに多くの症例が報告されています。
男性(81%)
性別に関してはこちらとしても手の打ちようがありません・・(苦笑)
40歳未満で発症(80%)
不安傾向・完璧主義(70%)
このデータに私は大きな疑問を持っています。すでにフォーカル・ジストニアを発症した後の音楽家に心理テストをすれば、不安傾向の診断が出るのは当然のことと考えるからです。
たとえば、音楽大学入学者全員を対象に調査を行い、追跡調査によって後に発症した人とそうでない人の比較を行えたらいいと思うのですが。
2021年4月10日追記
ドイツのフライブルク音楽大学で、確か2012年頃から、入学した学生全員の調査を開始しているはずです。どなたか詳しい方いたらぜひご教授ください。
遺伝的要因(36%)
これに関しては、本人の申告だけに基づいているため、もっと高率である可能性が大きいようです。
この調査を行ったAltenmüller教授から直接聞いた話ですが、自分の親類に運動障害を持った人はいない、と言っていた患者の母親が実は書痙だったケースがあるそうです。
この母親本人も自身が書痙と知らずに、ただの「字が下手・不器用」と思って、自然に字を書いたりすることを避けるような生活を送っていたそうです。
現在、発症した演奏家の血液を採取して、遺伝的要因を調べる研究が行われています。
2021年4月10日追記
ドイツのAlexander Schmidという学者が、2012年頃にジストニアと遺伝に関する論文でドイツジストニア協会の賞を受賞していたはずです。その後情報をフォローできていないのですが、あくまでも仮説として「ある種の特徴的な神経フィードバックシステムを持つ人たちがいて、その人たちがジストニアのリスクグループなのではないか」という話でした。そういえば私も血液を提供していました(笑)
慢性的な使いすぎ症候群・筋筋膜性疼痛症候群・神経障害性疼痛・筋肉の外傷
これらも、フォーカル・ジストニアの発症にかかわっている可能性があると考えられています。
アレクサンダー・テクニークの考え方からすれば、習慣的な体の使い方からあらゆる障害が発生するわけで、フォーカル・ジストニアにかかわらず、これらの生涯の予防・改善は必須です。
上記のリスクファクターの中で、我々がコントロールできるもの(心理傾向・演奏スタイルなど)、できないもの(遺伝・性別など)があり、少なくともコントロールできる部分について、アレクサンダー・テクニークの有用性を常に実感しています。これについてはまた詳しく書いていきたいと思っています。
| 01:27 | フォーカル・ジストニアについて
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