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音楽家のフォーカル・ジストニア

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音楽家に起こるフォーカル・ジストニアは現在のところ原因不明、決定的な治療法も不明の疾患です。
特定の音型、音域などが演奏しにくくなるという症状に始まり、悪化していくと次第に症状が出る範囲が広がり、演奏に必要なコントロールが失われていきます。
発症率は現在のデータでは音楽家の1%(Altenmüller2003)となっていますが、一説では20%近いとも言われています。

音楽史上最初の患者であると思われているのは、ローベルト・シューマン(Robert Schumann)です。
彼はおそらく右3、4指に問題があったと考えられています。
彼の作品、Toccata op.7は、右手中指を使うことなく演奏できるように作曲されています。
(Garcia de Zebenes, Alltenmüller)


彼は自身の日記の中に、フォーカル・ジストニアにかかった苦悩をなんども記述しています。

まるで、誰かが、僕の手をつかんでいるようだ。自分でどうやっても、さっぱり、弾けやしない。
1831年7月13日の日記Eismann:Robert Schumann, Tagebücherより。草間律訳

本当に、だんだん悪くなってゆくんだ。度々、天に向かって、嘆きながら、尋ねるんだ。「神様、一体、この私に何をなさったのですか?」
1838年12月3日、クララへの手紙Weissweiler:Clara und Robert Schumann, Briefwechselより。草間律訳

現代は、シューマンのころに比べたら格段に医学も進歩しています。
しかし、依然として原因不明の演奏障害に悩まされている音楽家が多くいるのが現状です。
「痛みはない、麻痺もしていない、しかし最近調子がおかしい。周りの人は精神的なものだと言う。でもやはり何かがおかしい」
そんな悩みを持つ人の役に立つことができればと願っています。