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少なければ少ないほど良い?マウスピースの圧力について

先日、京都で開催されたInternational Symposium on Performance Science(国際演奏科学シンポジウム)に参加してきました。

そこで、ご自身もホルンを演奏する「ホルン博士」大阪成蹊大学・平野剛さんの、マウスピースの圧力に関する興味深い研究を拝見しました。


Hirano001
Mouthpiece Force in French horn Playing
大会名:International Symposium on Performance Science 2015
会 場:龍谷大学,大宮キャンパス,清和館1F,ポスター番号「Ⅰ-9」
日 時:2015年9月5日
報告者:平野剛・木下博


なんと!あのバボラク氏が実験に参加してくれたそうです。

彼がF-durの音階を吹いた時のマウスピースの圧力を見ると(表④)、一番上、記譜の高いCでは、およそ30Nの力がかかっている、ということが分かります。N(ニュートン)というのは力の単位なのですが、30Nはだいたい3kgくらいの力で押されている圧力、だそうです。

楽器演奏を教わってきたなかで、誰もが一度は「マウスピースの圧力は少なければ少ないほど良い」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

そして、難曲をケロリと演奏するスーパープレイヤーたちを見て、「やっぱり圧力かけずに吹いているのだろうな~」と思ったことはないでしょうか?

ところが!です。

平野さんの研究では、12人の日本人プロ演奏家のマウスピース圧力も測定されています。そして、高いCを吹いた時の圧力で、バボラク氏のおよそ30Nを越える圧力をかけている人は、3人しかいないのです!
12人中9人までは、バボラク氏よりも低い圧力で吹いていたのです。

名手はノンプレスで吹いている、は神話だったのでしょうか?
今後のさらなる研究が明らかにしてくれることでしょう。

ここからは私の考えです。

バボラク氏がR.シュトラウスの1番のコンチェルト冒頭を吹いた時のマウスピース圧力も測定されています(表⑤)。これと音階を吹いた時のマウスピース圧力の結果(表④)を見て思ったのは、「メリハリがしっかりしているな」ということです。

おそらく、必要な時に、必要なだけの圧力がかかっているのではないかと思います。
例えば、初心者が音階を吹いているときの圧力を測定したら、おそらくもっとなだらかな分布になるはずです。

アンブシュアの不調をきっかけに私のレッスンを受講して下さる方の多くも、意識の有無はともかく、マウスピースの圧力が足りていない人が多いです。逆に、圧力をかけすぎている人はまだ一人も見たことがありません。

調子が悪くなると、とかく「正しい奏法」にこだわってしまい、その結果本来必要とされるマウスピース圧力まで減らしてしまい、さらに調子が悪くなり…という悪循環に陥ってしまうのではないかと推察しています。

今、アンブシュアの不調を感じている方は、少し意識してマウスピースと唇のコンタクトを増やしてみる実験をすると、発見があるかもしれません!

よく言われる「脱力」もそうですが、指導者にとっても気軽に使えてしまう「いかにも正しい」便利な言葉である「マウスピースの圧力は少ない方が良い」も、場合によっては演奏の邪魔になることを心に留めていただければと思います


アレクサンダーテクニーク&演奏改善コーチング 佐藤拓

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平野剛さんは、11月29日に東京音大で開催される日本ホルン協会のホルンフェスティバルで「科学で解き明かす!ホルン上達へのアプローチ」という講演をされます。

平野剛さんのウェブサイトhttp://takeshi-hirano.com/index.htmlもぜひご覧ください。


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